シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・音波 桜Side

  桜Side
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画面一杯に映るのは――

ウェディングドレス姿の芹霞さん。


戸惑い、はにかみ…微笑んで。


穢れなき純白色の可憐な花が、

今まさに咲こうとしているような瞬間。


私の息が詰まった。


胸が熱くて息苦しくて。

譫言のように…心に秘めたものを口走りそうな危惧を覚えた私は、思わず顔を画面から背けた。


隣に居る煌はしゃがみ込み――

やはり画面から背けるように俯いたまま、

橙色の髪を荒くぐしゃぐしゃと掻いていて。


それは苛立つという行為というよりは、

気を紛らわせるための行為のように思えた。


理性より欲に忠実な本能の男が、

本能に勝る理性を強める為の行為。


煌もまた、抑圧できない…溢れそうな何かをもてあましているのだと思った。


私の中での芹霞さんは、お洒落や化粧に興味を持たず、素のままの自然体を好む女性で、時に"ティアラ姫"などを可愛いと愛でる不思議な感覚の持ち主ではあるけれど。


画面における彼女の美しさは、

装飾品にかけられた"魔法"などではない。


生来の美貌が際立っているだけ。

いつもより"女性"を強調されただけ。

彼女は、緋狭様の実妹なのだ。


判っているのに。


もう何年来もの付き合いがある、顔なじみの芹霞さんとだというのに。


更に――

魅縛されてしまったのだ。


身体が熱い。

火照って仕方が無い。

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