好きになっても、いいですか?

04



「昨日は無事に、自宅へ入れましたか?」
「あ、ああ。騒がせて悪かった」


純一と敦志が並んで歩いていた。
いつもの社長室の前に立つと、敦志が先回りをしてIDカードをかざす。

中に入ると、すでに出社していた麻子が、ローテーブルを拭いていた。


「おはようございます」
「おはようございます。芹沢さん。昨日はありがとうございました」


敦志が御礼を言うのはおかしな話だが、そのまま受け流して麻子はテーブルを拭き終えると、控えめに部屋の隅に立った。


「今日の予定は……」
「まとめたものを打ちだしておきました。後は早乙女さんの微調整をお願いします」


敦志の言葉につなげるように麻子は言うと、一枚の紙を敦志に手渡した。

その間、麻子は一度も純一とは目を合わせていなかった。

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