リーンがカリムの冷たさに涙していたころ――。

カリムは不機嫌さを露わにして、外に飛び出していた。


艶やかな黒髪に顔を埋め、誰も踏み荒らしたことのない聖地に己を押し込み、心ゆくまで味わい尽くしたい。そんな欲求に駆られたのは初めてのこと。

だが掟により、処女を奪えば面倒をみる義務が生じる。

あの娘がレイラー王女の身代わりなら、それはいったい誰の企みか……ハッキリさせるまで迂闊な真似はできない。


それがわかっていながら、危うく娘に破瓜の血を流させるところだった。



「この辺りは涸れ谷が多くあります。今宵は月もなく、闇夜に砂漠に出られるのは――カリム様!」


衛兵の小言を振り切り、カリムは黒鹿毛の愛馬に跨ると夜の砂漠に駆け出した。