父が連れてきたその男性は、穏やかな笑みを浮かべ恭しく頭を下げた。


「サエキ=ジンと申します。ジンとお呼びください」


 艶やかな黒髪をサラリと揺らして、彼は顔を上げた。
 理知的な銀縁眼鏡の奥で、琥珀色の瞳がこちらをまっすぐに見つめる。

 ボディガードだと紹介されたが、長身のせいか黒ずくめの服装のせいか、随分華奢に見える。
 物腰も優雅で、執事や家令の方が適任のように思えた。

 クルミは家の敷地内から出ることを禁じられている。
 家の中にいて獣に襲われる心配など、まずない。
 ボディガードといっても形だけのものかもしれないと思った。

 父はジンをクルミに紹介すると、忙しそうに部屋を出て行った。

 最近領内で頻繁に獣の目撃が報告されているらしい。
 人が襲われたという話は聞かないが、それで父は忙しいのだろう。

 父が治めるこの領地には、隣接して広大な森が広がっている。
 そこは獣の森と呼ばれ獣の住み処となっていた。
 人が立ち入ることは禁じられている。
 獣は人を襲うことがあるからだ。

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