愛しい背中
バニラ
最近はいつも遅くまで残っている、彼。


私の出来ることは少ないけれど、同じ時間と空間を共有したくて、背を向け合ってありもしない仕事をしているフリをする。


カタカタカタ



静かな部屋に響くタイピングの音は、リズミカルで心地良い。

でも、それは彼の奏でる音だから―――。



私は気付かれないようにそっと椅子を半回転させて彼を見る。



彼の椅子には上着が掛けられていてそこに座る後ろ姿は手を伸ばせば届くのにとても遠くに感じて悲しい。



< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop