ライディーア王国。

 森の中の小さな国。緑にあふれたこの国は、平和を享受していた。

 ――隣国のディレイニー王国が戦争を布告してくるまでは。

 戦争が始まってすぐに世継ぎの皇太子が戦死。圧倒的に不利な戦況のもと、必死に戦線を維持しようとした国王も戦死した。

 残された王族は王女アルティナ一人――こんな状況では壮麗な戴冠式などできるはずもなく、大臣たちの見守る前で王家に伝わる宝冠を頭に乗せただけで戴冠の儀とした。

 アルティナが女王として即位したその直後。

 広間には、たくさんの貴族が集まっている。喪を表す黒一色のドレスの裾を長く引いて、アルティナは落ち着いた足取りで彼らの前に進み出た。

 月光のような白銀の髪を結ったアルティナの頭には、細やかな細工の施された金と銀の冠が載せられている。

 冠の中央には、アルティナの瞳と同じ色合いの紫水晶が輝いていた。


「――ディレイニー王国は停戦の条件を二つ出してきました」


 呼吸を整えて、彼女は話し始める。年齢に似合わない落ち着いた声音だった。

この作品のキーワード
ロマンス  身分差  切ない  主従  三角関係  騎士  ファンタジー  王子