天使の舞―前編―【完】
宮田は口を尖らせて、拗ねたような表情を見せながら、背中を向けている乃莉子の肩に、手をかけようとした。


でも、宮田の手が乃莉子の肩に置かれるよりも早く、その手は二つの大きな手によって阻まれていた。


「「気安く触れるな!」」


甘い重低音の声がひとつ。


ハスキーなテノールの声がもうひとつ。


同じフレーズの言葉が、ふたつの声で重なった。


乃莉子の目の前に立つ二人の青年は、お互いに顔を見合わせて苦い視線を絡ませる。


「アマネ…?何でここに?」


「久しぶりだな、キャス。
今は悠と言うんだってな。」


睨み合う二人。


悠は律儀にも、メルヘンへは仕事をしにやって来たのだ。


目の前に彼方と悠、後ろに宮田。


三人に囲まれて、乃莉子はオロオロしてしまった。
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