tearless【連載中】
2人きり
「また、風邪引くかな…」



ゆっくり立ち上がると、雨の降る場所へと足を進めた私。

いっその事、風邪をこじらせて入院でもしちゃおうか。

なんて、バカな考えが芽生える。



「ははっ…」



惨めすぎて笑える…。



校門を出ると、少しずつ重さを増す制服が足取りをも重くしていった。



“気持ち悪い”



張り付くブラウスに璃琥の言葉を思い出す。



「嫌いになんてなれない…」



好きになっちゃったんだよ…?

今更嫌いになんてなれる訳無いじゃん…。



ただ…

弱い私は、周りの目が怖いから気持ちに蓋をして、隠すの。

誰にも気付かれない様に…―――。










『…何やってんだよ?』


ちょうど璃琥が曲がるT字路を過ぎて、2m位進んだ時だった。

右腕を掴まれ、引き留められたのは。



振り返らなくても分かる。

璃琥の声。



「離して…」



振り返ることも出来ず、ただ一言発するのが精一杯。

どうして璃琥は、こういつもタイミングよく私の前に現れるんだろう…。

璃琥にだけはこんな姿見られたく無いのに…。



『…離さねぇよ』



“相変わらず可愛げねーな”そう言うと腕を掴む力が強まった。


 
< 70 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop