幸せになろう
第3話 幼なじみ
 慎一が片付け物をしていたら、1枚の写真が出てきた。
「この写真の人達は?」
「子供の頃の俺と、幼なじみの斉木綾香ちゃんだ」
「綾香さんってどんな子だったんですか?」
エレーナは綾香に興味を抱く。
「昔、近所に住んでた子で、いつも一緒に遊んだ。
確か、小学校の頃だった。彼女は、親の都合で急に引越しが決まったんだ。
引越しの日、俺は学校があったから、彼女にお別れが言えなかった。
それっきりさ。今から10数年も前の話だ」
「心残りですか?」
「うん」
「その願い叶いますよ。今からでも、彼女にお別れしに行きませんか?」
「そんな事が出来るのか?」
「はい」
エレーナの服が変わった。白い天使服。慎一と出会った日に来ていた服だ。
そして、大きな白い羽を広げた。まぶしい光が慎一を包んだ。

 慎一は、ゆっくりと目を開けた。
自宅の前だ。それにしてもやけにでかい家だな。
あれ? 体が……
気がつくと、慎一は小学生の体になっていた。
「どうなっているんだ?」
少し歩いた。どこか懐かしい風景。いつも見慣れているはずなのになぜか違う。
このアパート、確か解体されたはずじゃ?
ここの空き地に建っていたはずのマンションがない。
まるで、慎一が小学生の頃の風景だ。これはどういうことだ?
「10数年前の綾香さんが引越した日に時間を戻しました」
エレーナが飛びながら慎一に話しかける。
「そういうことか。だから、俺の体や町並みが昔の姿に戻ってしまったんだな」
しばらく歩くと、綾香の家の前まで来た。
引越しの作業中だ。家の中から綾香が姿を現した。
「綾香さんにちゃんとお別れしてあげて下さいね」
そう言ってエレーナは姿を消した。
「あっ、宮原君、来てくれたんだ」
「うん」
「でも、宮原君学校あるでしょ?」
「君にきちんとお別れ言いたくて、学校休んじゃった」
それから、出発の時刻まで2人でたくさんの思い出話をした。
だが、綾香は元気がない。転校することがすごく不安なのだ。彼女の気持ちを察した慎一は、
「綾香ちゃんなら、新しい学校でもきっと友達出来るよ。だから元気出せよ」と、励ます。
そんな慎一に綾香は、ややうつむきながらこう言った。
「宮原君は、私がいなくなったら寂しくない?」
綾香はそっと顔を上げた。そして慎一を見つめた。
その瞳はどこか遠くを見つめるように寂しげではかない。
「寂しい。でも俺、また逢えるまで我慢するから」
< 10 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop