エレーナ再びそれぞれの想い
「手抜きとかしていない? 終わったら新しい水をはるのよ。って水はってあるわね」
なつみは、プールの新しい水を確認した。
「そんな、馬鹿な、あんた独りで出来る訳無いじゃない! 誰かに手伝ってもらったんでしょ?」
なつみは、声を荒らげながら、プールサイドに立つシュウに迫って行った。
その時、だった。
なつみは濡れた地面で足を滑らした。
「あっ!」
その悲鳴もむなしく、プールの中へ真っ逆さま。
ザブンと水しぶきを上げた。
「なつみさん!」
なつみは、プールの中でもがき苦しむ。
なつみは泳げない。しかもプールは飛び込み用で水深が深い。
「大変だ!、助けなきゃ」
シュウはプールに飛び込み、なつみを抱きかかえプールから引き揚げた。
なつみはシュウに抱き抱えられた時、奇妙な感覚に襲われた。
自分を抱いているはずのシュウの感触がまるでない。
そして、ふわっと宙に浮いているような。
いや、それは奇妙な感覚に襲われたのではなく、本当に浮かされたのだ。
なつみはその時、水が入った片目をつぶり、もう片方でうすめをを開け、もうろうとする意識の中で一生懸命周囲を見ようとしていた。
なつみは引き上げられると、プールサイドに座り込んでゲホゲホ水を吐いた。
そして保健室へ運ばれた。

 なつみは、保健室のベットで寝かされながら、考えをめぐらした。
確かにシュウは、物に触れず飛ばしたり、動かしたりていた。
何より、シュウに助けられた時のあの妙な感覚……
それになぜ、シュウに天使が付いているのか?
白川シュウ追い出し作戦が次々と失敗するのは、ひょっとして天使達がひそかに妨害しているからじゃないか?
シュウは転入当初、孤立していたはず。
そういえば、さっき、プールサイドにまなみもいた。
千鶴、黒川、まなみと次々にシュウに味方が増えているような気がした。
美術の授業以来、シュウはクラスメイト達と仲良くなりはじめ、今では、シュウをいじめているグループも、なつみのためなら絶対というわけではなくなってきている。
シュウは一体何者? 魔法使い? あの天使達は?
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