エレーナ再びそれぞれの想い
まなみは、ブラシを立たせると、そのまま床をこすらせる。
シュウもまなみのまねをしてみる。
ブラシがふわりと浮き上がったもののすぐに床に落ちた。
「難しいな」
「慣れれば簡単よ」
まなみは、複数のブラシを巧みに操り、掃除をする。
シュウは、プールの栓を抜いて中を洗おうとする。
だが、水抜きだけで相当時間がかかる。
「そんな時間のかかる作業は必要ないわ。見てて」
まなみはプールの水を轟音とともにまるごと持ち上げ、一緒に飛んでいく。
「あっ、ちょっと、どこへ持って行くんですか?」
シュウは、まなみを追いかける。
まなみは、砂ぼこりのひどいグラウンドに一気に水をザーッとまいた。
「これで、部活がしやすくなったわ」
シュウは、ただ驚くばかり。
「さあ、貴方もやってみて」
シュウもポルターガイストの練習を始めた。やってみると意外と簡単に出来た。
まなみとふたりで夕方までに清掃を終え、プールに新しい水をはった。
「ありがとう、おかげで助かりました」
シュウが礼を言うと、まなみは、役に立てたことが嬉しく、微笑んだ。
 
 だが、ここで思いもよらぬ事態が起きていたのにシュウは気づいていなかった。
なつみが、シュウがきちんと掃除をしているか見に来たのだ。
シュウの周りを物が勝手に移動する。
宙を舞ってきたブラシをシュウが受け取る。
「何なの? こいつ!」
その時、エレーナ達が天使の羽を広げ、空から舞い降りてきた。
なつみは、物陰からひそかにシュウの様子を伺った。
エレーナ達に気がついたシュウ。
「エレーナさん達! どうしてここへ?」
「シュウ君の帰りが遅いので心配で迎えに来ました」
なつみは、愕然とした。
「なぜ、白川に天使がついているの!」
なつみは、頭の中がこんがらがってきた。
 
 なつみは一呼吸すると、意を決してシュウの元に歩いて行った。
「ちょっと、掃除は終わったの?」
シュウを睨みつけた。
「見られた!」
シュウとエレーナ達は慌てた。
エレーナ達は姿を消してシュウの学校生活を手助けしている。
だがこの時、シュウとまなみ以外誰もいないと思ったエレーナ達は姿を隠さなかった。
うかつだった。
「今、終わったところです」
シュウは、エレーナ達をなつみに見られたことに怖気づいたまま答える。
なつみは、きちんと作業を終えているか、確認して回った。
どこも完璧に終わっている。
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