さよならまた逢う日まで
第5章
残された2週間やりたいことは決まっていた。



それをやり遂げるために舞い戻ってきた。



そして新たにやるべきことが浮かんできた。



俺はそのうち消えてなくなる。



俺は一度経験した別れだけど俺以外はこれから来る別れを初めて味わう。


最初に涙した母ちゃんを思いだした。


また泣かすことになる。


そして今度は本当の別れになる。


親一人子一人の母ちゃんから俺は去ろうとしている。


何ができるんだろう。


ふと考えたのは数年前に出ていった親父のことだった。


一度だけ、ポストに届いていた母ちゃん宛ての手紙のことを思いだした。


差出人は見覚えのある名前、親父からだったことをぼんやり思いだした。


その手紙を捨てずに引き出しにしまっていることも俺は知っている。


憎んで離れた奴の手紙を持ち続けるわけはない。


もしかしたら俺がいなくなってから、母ちゃんを支えることができるんじゃないか。


その手掛かりを見つけるため俺はここに来た。
< 53 / 73 >

この作品をシェア

pagetop