本気の恋の始め方
流されて


甘く、ひそやかな低い声が耳元で響く。



「潤さん。俺とこのまま抜けません? いい店、知ってるんです」



マーケティング部に配属された男の子に、いきなり誘われた。

しかも彼らの歓迎のためにもうけた席の二次会で、人知れず。




私、三木潤(ミキジュン)。23歳。

短大卒業後、世界のエクセレントグループと呼ばれる一ノ瀬ホールディングスに、奇跡の12次試験を突破して入社。一般職で働き始めて四年目の春――。

私が事務で働くマーケティング部に、ぴかぴかの新入社員がやって来て一ヶ月がたち、個性的な新入社員たちに振り回されつつもようやく慣れ始めた、なんて思っていたのに。







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