海の花は雪
「…本て?」

「ああ、これ。深谷君が言ってた『海底の王家』の上巻と下巻」

そう言いながら、手元で開いていた本と、かたわらに置いていた一冊の本を深谷君の前に並べた。

「…読んだんだ…こっちも?」

深谷君が思慮深い顔で、その本を見つめると、下巻の方を指差した。

「あ、こっちはまだ途中だよ。昨日、図書館に荷物を取りに行った時、二冊とも借りたんだけど、さすがに疲れちゃって読破はムリだったね」

「…今どの辺?」

「えっと、市街観光して図書館にいる当たりかな〜」

ペラペラと、読みかけのページをめくって見る。

「…じゃあ、アルペジオの身に何が起きたのか、知ってるんだ…」

「うん、言っちゃっていいの?」

深谷君は、黙ってうなずいた。
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