オルガンの女神

対価を得ず、恩義を売る。

相互利益を逸した繋がり。

掃除屋(クリーナー)界では無償の“付き合い"が時に美徳とされる事もある。

『手伝って』…───。

今回もそう。その一言だけで、ベックは首を縦に振った。


「さて、まずは段取りを聞こうか」


ピザを頬張り、警察車両の赤色灯に目を細めるベック。

すると、ゴム床材にボストンバッグが放られた。

丸く膨らんだボストンバッグ…───。


「これを届けるのよ。ある病室にね」

「病室…───?」

「“依頼外の事には干渉しない"…───、そうでしょ」


「その通りだ」と自嘲的な笑みを浮かべるベック。


「それでその間を護衛しろと。聞くがあんた、鉛に濡れる覚悟はあるのか」

「どど、ど、どういう事だ」

「」
< 18 / 19 >

この作品をシェア

pagetop