In the warm rain【Brack☆Jack3】
Act,1

【1】

【1】



 日差しはすでに真上を通過し、一日のうちで一番温度が上がる時間帯にさしかかっていた。

 アジア特有のじとじとした湿気の多い夏は苦手だった。

 エアコンはあまり好きじゃないから、最小に押さえては いるが、室内はそれでもまだ少し寒い。

 だから、思わずホットコーヒーを入れたりもする。


「矛盾してるのよね…」


 軽くため息をつきながら、デスクの書類に目を通そうとして、ふと手を止めた。


「………」


 デスクの上に置いてあるパソコンに、メールが入っている。

 苛々してる時のいつもの癖で、左手の人差し指をトントン、とデスクの上で鳴らして。

 そしてふと、その手が止まる。


「………」


 差出人なんてどうでもよかった。

 ――問題はその、メールの内容。


「――…無駄、ね…。こんなことしても」


 そう呟いて、ユイはパソコンをそっと閉じる。

 そして立ち上がり、窓際に歩を進めた。

 どおりで蒸し暑いと思ったら、空がだんだん淀んできていた。


「この様子じゃ、ひと雨きそうね…」


 本格的な夏はまだ遠そうね、とユイは静かに呟いた――。
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