朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
柚は大あくびをしながら、半分目を瞑ったまま暁を見送った。


部屋を出て行く暁に、由良は最後まで頭を上げることができなかった。


柚と二人きりになった由良は、自らの失態に反省しつつも、込み上げる喜びを抑えることができなかった。


「柚様っ! おめでとうございます!」


 由良は頭を上げると、涙を浮かべて感激の想いを顔いっぱいに表した。


「は? なにが?」


 柚は背伸びをしながら、きょとんとした表情を浮かべた。


「立派に、お勤めを果たしたようでございますね。お世継ぎのご誕生が楽しみでございます」


「あ~そのことか。世継ぎなんてできるはずないよ」


「なぜでございますか?」


「だって何もなかったもん」


「何も? 一晩共寝をしたのに、何もなかったのですか?」


「うん。由良の言った通り、添い寝をしてもらっただけ」


「そんな……まさか……」
< 67 / 342 >

この作品をシェア

pagetop