あなたの心にいる人は… (完)
「何を泣いてる?」


聞き違えるわけのないその声に慌てて涙を拭いた


「これ……ありがとうございます……」


「また怪我されたら困るから用意しただけだ。具合はどうだ?」


「大丈夫です」


「そうか」


廉はすぐに書庫から出ていった


本当に夕食にあわせて帰ってきてくれた


例え跡取り息子でも医者としてかなり忙しいことは知ってる


なのに理由はなんであれ時間を作ってくれる優しさが嬉しい


「ただいま戻りました。夕食にしましょう」


「はい」


毅の声にもう一度涙を拭った


「出すぎたことだとは思いますが廉は不器用な男です。あいつのことを分かってやってください。誤解されやすいので……」
< 38 / 269 >

この作品をシェア

pagetop