愛罪



「良太さんとお母様の接触を調べる折、良太さんの関係者との接触なども伺ったのですが、やはりお母様と良太さんはもちろん、関係者の方との関わりもありませんでした。主治医と担当ナースは、過労が原因だと遺書を残していたようですが……」



 後藤さんは一切噛むことなくそう言葉を並べると、重々しく語尾を濁らせて一度口を閉じた。

 この分だと、彼の脳裏には彼女、真依子が浮かんでいることだろう。

 僕だって、そう。

 こんな偶然あってたまるか。直接関わりがなくとも間接的に関わる者が“三人”も自らを殺しているのだ。



 ーー君は、何者なの?



 目に浮かぶ彼女に問いかけても、返ってくるのは唇で弧を描いた美しい笑みだけ。

 ねぇ。真依子は一体、何を抱えているの。



「申し訳ありません。頭を整理しておりました」

「その自殺、彼女……真依子が関わってますか」



 小さく咳払いをした後藤さんの言葉を無視して、僕は淡々と核心をついた。

 ぴくりと動く彼の眉頭が容易く想像出来る。



 違うんだと。そうじゃないんだと。

 どこかで否定して欲しい自分がいるのも隠せない事実だけれど、きっとそれは願うだけ無駄だ。

 彼氏が彼女に浮気の許しを請うことと同じぐらい、叶わぬものだと思う。

 何故なら、悪足掻きだからだ。



 その件に真依子が関わっていないとすれば、今の僕たちにとっては最大の謎となる。



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