椿ノ華



「椿様がお屋敷に住むようになってから、帰る機会が増えましたね。

葵様も可愛らしい妹に会いたいんでしょうけど」

「…挨拶、してきますね」


部屋の片付けを始めた使用人に一言残し、大広間に向かう。


「…お兄様。おはようございます」

「…ああ」


大きなソファに腰掛け、
新聞を読んでいる葵が居た。


「お祖父様も使用人達も、

最近お兄様がよくお帰りになると言っていました。

お仕事、落ち着いているんですか?」

「…ああ。まあな」

「お忙しいんですよね。

お体にはお気を付けて頑張ってください」

「…ああ」


基本的に無表情な葵だが、
大分表情から気持ちを読み取れるようになった。

パーティーでずっと傍に居た成果だろうか。



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