君の左手が気になるのは、なぜだろう?
試合を見に来い
いつもの教室。

ゆっくりと流れる英語の授業。

相変わらず、
ヤツは私の隣の席だ。


教科書を壁みたいに立てて
隠れるように寝ている。

隠れきれるような
小さな身体でもないくせに。


樹里を紹介してから
ヤツが私に話しかけてくることはない。

このまま私も話すことは、ないと思う。


「じゃあ、一節ずつ訳してもらおうかな。
この列の先頭から」
と英語の佐々木が言った。

「えぇー!」と声が上がる。



―ヤツの席の列だ。
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