夜桜と朧月
朝、目が覚めると、布団の上で横になっていた。

おそらくここは、お客さん用の部屋だろう。



今の状況はと言えば、全裸の上に、首はガッチリと逞しい腕にホールドされている。


私の横には、やはり一糸纏わぬ薫の…体。


あの後、私にとっても薫にとっても、久しぶりの行為だったせいかお互いに歯止めが効かなくなり、何回求めあったのかが定かではない。



私は楓とは随分ご無沙汰だったし、薫は姉が妊娠していたから、アッチの方は、儘ならない状態が続いていたようだった。



盛りのついた中高生じゃあるまいし、赤面してしまう。



「ん…今、何時……?」


薫に聞かれ、柱に掛かる時計を見た。


「まだ、6時」


気怠げに応えれば、更に体をくっつけられる。


「じゃ、あとも一回」



やーだ、と身を捩りその腕から逃げようとしても、しっかり捕まえられて、離してもらえない。



抵抗を諦めて薫の方を向いたら、目の前に赤い小箱が落ちてきた。


「……なにこれ?」


シックなリボンに包まれたそれは、どう見てもプレゼントのようで……。


「merry Christmas」



クリスマスプレゼント!?


思わずガバリと起き上がったものだから、あられもない格好を晒してしまって恥ずかしいったら。


「えっ…私、何も用意してない……」


薫はくすりと笑って、私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。


「欲しかったモノはちゃんと貰ったから」


ぐしゃぐしゃに乱れた頭も気にならないぐらい、今の私は動転してる。



クリスマスにプレゼントを貰うなんて、久しぶりで素直に嬉しい。


「俺が今欲しかったのは、真愛」


更に続く薫の甘い言葉にクラクラしてしまう。


「とっ…とりあえず、開けてもい?」


ん、と頷く薫の横で、包装紙を丁寧に剥がしていく。



中にはいっていたのは、ダイヤモンドが3連填められたピアス。


「……これ、高かったんじゃない……?いいの?こんな高いの貰っても……」


思わず声が震えてしまうのは、嬉しさからか。


「……多分、あいつに聞いてもそうしてやってくれって言うと思う。死出の旅路についた自分には、必要ないものだから……。そう言いそうな気がした」



だから、あいつの分も貰ってやって。そういう薫に、涙が出そうになった。


「つけて、くれる?」


涙で前が見えなかったから、薫にお願いした。


薫がどんな顔をしているのかは分からない。


けど、少しでもその痛みが和らげばいいと密かに思う。




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