あの頃…
「おはようございます、黒崎先生」

それと昨日、ありがとうございました

朝一番顔を合わせた海斗に頭を下げる

見上げてくるブラウンの瞳を見ながら

「これから黒崎先生は立花先生を無事に家送り届ける役目で毎回飲み会には出席してね」

と先ほど笑顔で告げられた言葉を思い出す

冗談じゃない

それではこのじゃじゃ馬専門調教師まっしぐらじゃないか

「立花、いくらなんでもあのアパートはないんじゃないのか」

小さく息をつく

「仕方ないじゃないですか。研修医ってお金ないし、それに病院から近い方がいいだろうなって思ったんです」

「俺が研修医の時は3LDKに住んでたけど」

しかも築5年、オートロック式、研修先から徒歩5分の快適空間

「それ!黒崎先生だからです!!」

一研修医と黒崎病院跡取りを一緒にしないで下さい!!

「跡取り言うな」

このじゃじゃ馬娘が、と心の中で付け足す

少しだけ、そう言われることも気にならなくなったような気がしながら
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