アウト オブ ザ ブルー

「キーチは…?」


「ん?」


「どうして、ここに…?」


「ああ…、たまたまそこを通りかかったら、ここから俺のホールとオーツが聴こえてくるだろ…?人の大事なCDを、それも講義時間中に聴くとはいい度胸してるヤツがいるなと思って来てみたんだけど…、まさかミッチだったとはね…」


「あ、ごめんね、勝手にCD借りちゃって…」


慌ててラジカセの停止ボタンを押すと、彼は私がいつも心に浮かべていたのと同じ笑顔を見せた。


「いいよ、好きなだけ聴いてきなよ」




遠くへ行ってしまったはずのキーチが、今は手を伸ばせば触れられるくらいの距離にいた。



胸の奥に閉じ込めていた彼への想いが一気にあふれ出し、


これ以上一緒にいたら心がどうにかなりそうだった。



私はもう十分聴かせてもらったからと礼を言い、冷静を装いながらCDと歌詞カードをケースに戻した。


そしてそれを棚に片付けると、ペットボトルをバッグにしまい、帰り支度を整えた。
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