不器用
麻薬
麻薬みたいなそんな関係だと思った。実際私は麻薬なんてしたことがないけれど、気持ちよくて気持ちよくて一度はまったら抜け出せない。そんな感覚だと中学の時に教わった。一度負けたら終わり。あとははまるだけ。落ちていくだけ。

佐藤先輩との関係は麻薬そのものだった。

「キスして」

薄暗くなった私の部屋。佐藤先輩の声だけが静かに響く。そっと触れるようにキスをすると、それが合図のように私の頭を右手で押さえた。たまらなくこの瞬間が好きだった。求められているような、そんな感じがするのだ。角度を変えて食べるように。ぺろりと唇を舐める仕草はなんとも官能的だった。今まで二人の人とキスの経験があるけれど、キスだけでこんなにも体が疼くのは佐藤先輩とのキスだけだった。




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