さよならの魔法
『クラスメイト』
side・ユウキ







彼女と出会ったのは、中学1年の時。


同じクラスで、席も比較的近く。

だけど、それだけだった。



出身の小学校も違えば、グループ分けで一緒になった記憶もない。

接点なんて、全くと言っていいほどなかった。


そんな彼女との初対面の瞬間を、残念ながら俺は覚えていない。



多分、変な出会い方はしていないはずだ。

人当たりの良さだけは、自信がある。


天宮 春奈。

ロクに接点すらなかったはずの彼女のことを、やけに思い出すのは何故だろう。


その理由は、未だに分からない。








中学1年の春。


入学式に咲いていた桜が散って、青葉になる頃。

真っ黒な学ランを着始めて、1ヶ月。



あんなに美しく咲いていたはずの桜は、呆気なく散ってしまった。


淡いピンク色の花。

薄紅色の花びらは地に落ち、その代わりに鮮やかな緑色の葉が顔を出す。



校舎の脇にある花壇には、色とりどりの花。

名前も知らない花が、宝石みたいにそれぞれの色を出して輝いている。


誰が植えているんだろう。


別に花が特別に好きだという訳でもないけど、すごく綺麗だな。




夏を迎える、ほんの少し前。

暖かな春の陽気が、少しずつ夏の蒸し暑さに変わる時期。


この学校の恒例行事が、校庭で行われていた。








ピーッと、甲高い笛の音が俺の前で吹かれる。

何も、笛が吹かれているのはここだけじゃない。


無駄に広い校庭のあちらこちらから聞こえる、同じ音。

整然と並ぶ、体育着姿の生徒。



学年別に違う、3色のカラー。

これは昔からの決まりで、入学する年ごとに体育着の色が別の色に変わるのだ。


今年の新入生のカラーは、緑色。


この学校を囲む様に茂る、山々の色と同じ色だ。



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