Freestyle
明日の予定は?
明日は学校。その次の日も学校。
そんな日常が始まって三週間。
大学に入学して5月を迎えた柚(ゆず)と沙良(さら)は
大学生活にも徐々に余裕が出だし、毎日がつまらなくなり始めていた。
大学寮でも同じ部屋の2人は、高校からの同級生で、
毎日、毎日一緒だった。
「沙良~、そろそろサークルとか
入らない?」
食堂で食器を片付けながら、
柚は聞いた。
「あんたがサークル~?部活もまともにできなかったあんたが?」
「んーだってさぁー毎日授業でさ~
帰っても寮に居るしか予定がなくてさ~
…つまらん!!」
「あたしと一緒じゃつまらんって?」
「そうじゃなくてー!!」
「わかってるわかってる。…そうね~
あたしもそろそろ楽器吹きたいし。」
「決まりっ!!少人数で楽器吹ける
サークル探そーう!!」
「あんた吹けるのー?」
「大丈夫!部活は行かなかったけど
楽器はサボってないから!」
柚と沙良は、未だに部員募集の
看板を掲げた先輩達の中へ
入って行った。
沙良は高校時代、吹奏楽部でトランペットをバリバリ頑張っていた。
そんな沙良を置いて、柚は途中でリタイアした。
自己主張が強い柚は、大勢での
集団行動が苦痛でしかなかった。
だけど柚は、サクソフォンが大好きで、吹奏楽部を辞めた後も、
個人で毎日楽器を吹いていた。
「せっかく大学生になったんだしさ、
自分の好きなように演奏できるサークルとかあったらいいのにな~」
「もう、それ1人で吹いた方が
楽だよね?(笑)」
「違うのー!少人数で、気楽に集まって吹けるくらいが私は好きなのー!」
沢山の先輩の間を抜けながら、
2人は音楽関係の募集看板を探した。
しかし柚は背もある程度高く、
厚みも薄い為難なく歩けたが、
沙良はそうはいかない。
小さくていかにも女子~な沙良は、
人と人の間を抜けるだけで必死だった。
そんな中でも
「ねーねー、将棋サークル入らないー?女の子足りなくてさ~!」
「漫画サークル!君小っちゃいし可愛いから絶対モデルになれるよ!」
沙良への誘いが途絶えない。
強引に腕を掴まれたり
引っ張られたり、道を塞がれたり…
「ちょっとあんた達!あたしの相方取らないでくださいますー?!」
五人目が沙良に手を出した時、柚子がその男の腕を引っつかんだ。
「もー柚やめなって!
あたし大丈夫だし!」
「沙良はそんなマイナーサークル探してないです!道開けて下さい!」
「何だよこいつ!先輩に向かって!」
「いーよどうせ関わらないでしょうし!そんなサークルあたし達は
探してませんって言ってるのー!
音楽サークルありませんかー?!」
「もー柚は…」
その柚の声に、サークル募集の先輩達は
2人に道を開けるようになった。
ただ、そんな光景を見てすぐ、
自分のサークルに誘う先輩もおらず、
結局、目当てのサークルは見つからずに2人はいつもの溜まり場、非常階段へ向かった。