山神様にお願い


 ぎゃー!うおおおおおおー!!ダメですよトラさああああ~ん!!

 何事かを呟いて、トラさんがシカさんに覆いかぶさっている。完全に組み敷かれているシカさんの顔は見えないけれど、きっとパニック状態になっているはずだ。トラさんはシカさんを口説くのに夢中で俺には気がついていなかった。

 ダッシュで近づいた俺はそれからは慎重に近づいて・・・リュウさんが残していった雑誌を取り上げて・・・・トラさんが首を傾けてシカさんに迫ったその瞬間に─────────


「はい、ストップ」


 そう言いながら、雑誌を突っ込んだ。

 今にも接触しようとした二人の顔の間に。

 あはははは、間に合った!ナイスなタイミングだぜ、俺!!


「・・・おーい」

 トラさんが体を起こして、眩しそうに太陽を背負って立つ俺を見上げた。眉間にはくっきりと皺がより、細目を更にほそ~くしている。

 トラさんがのいた後にはレジャーシートの上に横たわる、真っ赤になって目を見開いているシカさんが。ああ、やっぱりパニックになってるよな。やれやれ、良かったよ間に合って。

 トラさんが仏頂面で俺をぎろりと睨みつける。俺は予想通りの展開が面白くてゲラゲラと笑ってしまった。

「そろそろトラさんがシカちゃんを襲ってるかもしれないから、見てきて邪魔してねってツルさんに言われたんすけど、まさか本当にそうなってるとは!」


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