大学4回生で滅多に学校に行くこともない私には、日常的に接する人間がえらく少なくなってしまっている。

 友達はまだ就活に飛び回っている子もいるし、皆個人的にそれぞれがバイトやクラブに忙しいから、遊びにいく相手もいない。

 今のところ、家庭教師先の生徒と彼氏。この二人が、私の日常生活を形作っていると言ってもいい状況だ。その他は、私もアルバイト探しで時間を埋めていたから。

 二人の男の内の一人は、実際、かーなりの困り者で・・・。

 

 その夜、私は、上機嫌で家庭教師のアルバイトに向かった。

 週に2日入っているこの家庭教師に行く前は、自分で最大限の気合を入れる必要がある。だけど今日はテンションが高く、気分的には鋼の鎧を身にまとっている気分だった。

 ここのお宅は息子の高校受験で家庭教師を探していた。大学に入学したばかりの私は、学生課のアルバイト斡旋でくることが決まったのだ。

 生徒は男の子で、名前を阪上八雲君という。八雲・・・やくも、が名前だ。さかがみやくも君。最初に聞いた時は「格好いいなあ!」と思ったものだけど、本人は気に入っていないらしく、八雲って呼ばないで、と最初に釘をさされたものだ。

「じゃあ何て呼ぼうか?」

 私がそう聞くと、彼は、整ってはいるがまだにきびが目立つ幼い顔をプイと横に向けて言った。

「先生の好きに呼んでいいよ」

 それで、困った挙句に普通に阪上君、と呼んでいる。

 だけどこの生徒の素が見え出した頃から、呼び名は「悪魔君」に変えるべきだったかと真剣に悩んだことがある。