カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

ポン、と、いい終わったタイミングで、エレベーターが音を上げてドアを開き始めた。
『開』ボタンに親指を押しつけたまま、本庄の動きを待つ。

ドアは完全に開いたっていうのに、本庄は未だ、『7』で止まったランプを見上げていた。
数秒して顔を下ろしたヤツと、挨拶を交わしてから初めて目を合わす。

男の俺でも、『綺麗な顔だな』と思わされる本庄を見続けていると、一切表情を変えないまま足を踏み出した。
そして、あと一歩で降りるところで立ち止まると、俺を見ずに淡々と答える。


「――まだ、会ってませんけど」


「まだ」っつーことは、会う気はあるってことで間違いないんだよな。


「本庄サンがどのくらいの想いで、なにを考えてるかわかんないけど。でも、それって俺には関係ないから」


正直言って、敵に回したくないタイプ。
どう返ってくるかわかんねぇし、次にどう動くのか全くもって予想がつかねぇ。


「つまり……?」


くるりと首を回して俺を真っ直ぐと見る双眼は、あまりに透き通って見えて、それだけで威圧感を感じてしまう。
だけど、こんなことで一歩引いてたらダメだろ。


「宣戦布告――ってやつさ」


俺がこの道を選んだ最大の理由。


こいつの存在で、余計に手離したくなくなったんだ。



< 135 / 206 >

この作品をシェア

pagetop