おかしな二人


あたしがソファに腰掛けて間もなく、薄いグリーンのグラスに入った水が運ばれてきた。

「ごゆっくりどうぞ」

あたしがコクリと頷くと、凌がグラスをほんの少し掲げて話す。

「悪いな、岸谷」
「いえいえ。速水さんの頼みを断れるわけないですから。でも、今度は、貸し切りでお願いしますね」

ほんの少しイジワルに笑って、パーティーにでも盛大に使って欲しい、とお願いしている。

「了解」

凌は凌で、しっかりしてるよな、と笑いながら応対している。

さっきの男性は、どうやら岸谷さんというらしい。
あたしの方へ微笑みを返すと、静かに下がっていった。

凌が呼び捨てにして、岸谷さんが敬語というところを見ると、多分後輩なんだろう。
ということは、三〇才手前?
けれど、どう見ても凌より落ち着いているから、年上に見えてしまう。
いや、凌の仕事が垢抜けているから、余計にそう見えるのかもしれない。


< 303 / 546 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop