水上さんは、ゆっくりと背を向けると、ポケットに手を入れたまま歩き去る。
あたしは、凌の体を押しのけ叫んだ。

「待ってっ!」

叫んだ声は届いているはずなのに、彼の足は止まることなく路地から姿を消す。

「あかり……?」

何が起こったのか解らない凌は、どうしたんだ? とあたしの腕を掴み引きとめた。

「ごめんっ。凌、放してっ」

背の高い凌を見上げながら、どんどん距離が離れていく水上さんを意識だけが必死に追った。

「あいつ、誰?」

焦るこの状況に似つかわしくないほど、ゆったりとした口調で凌が疑問をぶつけてきた。
けど、応えている余裕なんか少しもない。
とにかく今は、水上さんのあとを追いたい。