おかしな二人
そうしてかわりに浮かぶのは、毒舌全開の顔や、皮肉たっぷりの口元や、、酔ってヘロヘロになった顔や、優しくした事に照れた横顔だった。
彼の表情だけが、頭の中を埋め尽くしていったんだ。
角に立ち止まったままの彼は、ニットの帽子を深々とかぶり寒さに白い息を吐いている。
大きな瞳は怒りを宿したあと、寂しそうに伏せられた。
そうして、口元から力ない呟きが漏れ聞こえてきた。
「そういうことか……。おったんやな……そういう奴が……」
「ちがっ――――!」
急に声を上げたあたしに驚き、凌が体を離し、あたしが見つめる先を振り返る。
寒い冬の夜、その場の空気が凍りついた――――。