おかしな二人
「ごめんっ。凌、あたしっ」
説明するのももどかしく、ただあたしは水上さんが消えてしまった先へ必死な顔を向ける。
その時、凌の顔がさっき奈菜美さんと別れたときよりも、いっそう悲しみに歪んで見えたのは、気のせいだろうか……。
掴まれたままの腕の力は、緩むことなくあたしを拘束し続けている。
「明の、好きなやつなの?」
焦るあたしに、わざと意地悪でもするように凌がまた疑問を投げかけてくる。
「おねがいっ。行かせて――――……っ」
悲痛な表情でひたすらに訴えかけるあたしに、諦めたのか凌の掴む手が緩んだ。
「ごめんね、凌……」
あたしは、それだけを言って走り出す。
唇を噛むように背中を見つめ続ける凌の視線に、あたしは少しも気付いていなかった――――。