恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
テーブル席を二つ繋げて6人使用。
恵美、私、カナちゃんが並んで、向かい側に笹倉、三輪さん小西君の順に並ぶ。


向かいの紅一点、三輪さんがぽん!と手を打ち鳴らした。

「はい!今日はとってもおめでとうなことがあります!」


それを横から攫って恵美が言った。


「この春うちを退職した優先輩に無事赤ちゃんが生まれました?!」


ぱちぱちぱちーって拍手して、終了の装い。全員で外すノリはお約束かな。

「え、ほんとにそれ?俺の昇進祝いかなって、俺、調子乗っちゃってた?」


笹倉が態とらしく肩を落としてみせた。
隣に座る三輪さんが、嘘ですよぉって言いながら腕に抱きつく。


まだ最初の乾杯だけですっかり酔っ払いの演出なのは、全員のテンションが集合地点から延々上昇中だからだ。


三輪さんの仕切りなおし。


「瑛人先輩が、副店に昇進されました!おめでとうございまぁす!」


うぃーっすって適当なことを口にしながら、2度目の乾杯。
早々とグラスをあけた小西君はもうドリンクメニューに目を落としている。


「お前らアレだな。結局飲めたらなんでもいいんだな」

「ぶっちゃけ、赤ちゃんの方がおめでたいっすよね」



小西君がけらけら笑う。

確かに。
赤ちゃん誕生と比べられてしまうと副店昇進も印象は薄くなる。
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