Only One──君は特別な人──
車は走り出し、あっという間に見えなくなってしまう。


「はぁ」と、溜め息をつくと白い息が浮かんでは消えた。

季節は真冬の12月半ば。しかも夜とくれば空気は冷たく寒さがぐっと増す。


あたしは一人暮らしするアパートへ向かう。

玄関を開けると真っ暗で静かな空間が孤独を襲った。
家の中に入るとすぐに暖房のスイッチをオンにする。


あたし、水谷もえ(みずたにもえ)24歳。独身。
ついさっきまで、大好きな竜くんとデートをしていた。


竜くん。山下竜(やましたりゅう)25歳。独身。彼女持ち。
その「彼女」というのがあたし……ではなかった。



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