「――お取り込み中失礼いたします。陛下、火急の事態につき、ただちに、公務にお戻りいただきたく」


入り口付近から聞こえた声の主はカリム・アリーだ。

彼は王都に戻りたくても戻れない。王が戻ろうとしないため、彼もこの砂漠の宮殿に留まるしかなかった。

無論、王の許可した隊商が、神官を伴い不毛地帯(アネクメネ)を横切ってくる。そんな彼らに同行すれば王都に戻れるのだが、それはそれでサクルが認めようとはせず。
 

(馬鹿者め、この状態でどうやって公務に戻れと言うのだ!)


口淫を経て、サクルは今、リーンの中にいた。

怒鳴ろうとしたが、それより早く、「きゃっ!」小さな声でリーンが叫び、サクルの胸に顔を伏せた。


「……クッ!」


同時に驚きのあまり、リーンの中が急激に狭まった。

ふいに度を越した締め付けがサクルを襲い……彼も怒鳴るに怒鳴れない。二、三度深呼吸をしてから、ようやくカリム・アリーに返事をした。


「――我が国が攻められたか?」

「いえ、そうではありませんが」

「そうでないなら、我らは公務中だ。邪魔することは許さん。階下に下がっておれ」


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