本当の俺を愛してくれないか?
だから...

俺は?

「疲れた...」


玄関の鍵を閉め、家に入りそのままソファーへと座り込んだ。


急な休み明けの出張から解放され、一気に疲労感が襲ってくる。
時計を見ると夜の11時過ぎ。あと一時間もしないうちに日付が変わってしまう。


どんなに疲れていても明日はまた仕事で会社に行かなくてはいけない。

本当はこのまま眠りに就きたいけど、そういうわけにはいかない。


「...明日、か」


たまたま入り込んだ出張。
そのおかげで二日間会社には顔を出していない。
つまりあの土曜日の朝から小林さんと一度も会っていない...。


どんな顔をして彼女に会えばいいのだろうか。
...いや、変に意識した方がおかしいよな。普通に挨拶してさりげなく謝罪して...。それで大丈夫だろうか?


「怖いな、明日が...」


そう呟きながら俺は不覚にも眠りに落ちていってしまった。


ーーーーーーー

ーーー


「やばい!間に合うか?」


早朝の車内。渋滞に巻き込まれてしまいさっきから時計ばかり見てしまっている。

昨日うっかりあのまま寝てしまい、しかも寝坊。慌てて家を出たものの見事に渋滞にはまってしまった。


今まで遅刻なんてしたことなかったのに...。ましてや上の立場にいる人間として遅刻するわけにはいかない。


「どうにか間に合ってくれればいいんだけど」


遅刻するか、しないか。
そのことばかりで頭が一杯になってしまっていた俺はこの時すっかりと忘れてしまっていた。
彼女の存在を...。


ーーーーーーーーー

ーーーーー


バンッとドアを閉め、慌ててオフィスへと向かう。


いつもは地下駐車場には何人か人がいるのに、今日は誰一人としていない。


時計を見るが、どうにか間に合いそうな時間。

急いでエレベーターを呼び出し、乗り込む。


一息つき、一気に上がっていくはずのエレベーターはなぜか一階で止まり、ゆっくりとドアが開かれた。


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