本当の俺を愛してくれないか?
だけどその短い一言が私の胸には沢山響いてしまって。


なぜか涙が溢れてしまった。


「...俺のこと、ちゃんと分かってくれてありがとう。...嬉しかったよ」


最上部長...。



本当は言ってしまいたい。
私は最上部長が大好きですって。
だから菜々子さんなんて早く忘れて私を好きになって欲しいって。

でもこんな気持ち、ただの私のわがままだから。
それに最上部長を困らせてしまうだけ。なら言わない方がいいに決まっている。


...決まっているのにどうしよう。

私今、凄くこのまま最上部長に抱き着きたくて仕方ない。

優しく頭を撫でられて『ありがとう』って言ってくれて。


引くわけないじゃない。こんなに優しくて素敵な人に。


女みたいな趣味を持っていて、振られた女を忘れられないような女々しい人で。

仕事ができて、かっこよくて。
優しくて笑顔が似合って。


だから私は、最上部長が好きなの。

...好きすぎるのに、言えない。


こんなに至近距離にいるのに抱き締めてもらえない。


嬉しい気持ちと、悲しい気持ち。

色々な気持ちが入り乱れて涙が止まらなくて。


だけど泣いていることに気付かれたくなくて、私は頭をあげることは勿論、涙を拭うことも、そして鼻を啜ることも出来ずにいた。
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