体育館12:25~私のみる景色~
誤解だったようです

 時は過ぎて、佐伯先輩を怒らせてしまった日からもう3週間が経ってしまった。


 1学期の中間テストもとっくに終わって、今日からバスケ部は県予選らしい。


 あの日から今日まで、一応お昼休みにバスケを見に行ってはいた。


 だけど、いつもの定位置とは違う場所で。


 いつもより遅い時間に。


 定位置からは佐伯先輩の姿はよく見えたけど、柵から離れた場所からは全然見えなくて。


 周りの女の子たちの声からしか、試合の様子をうかがうことができなかった。


 いつもの場所にいてもしも佐伯先輩の目に、私の姿が映ってしまったら。


 それでいつもの調子を乱してしまったら。


 そんなことを思ったら、いつもどおりの時間に、いつもどおりの場所で佐伯先輩がバスケをしている姿を見るなんてできなかった。


 ……でも、本当はウソ。


 本当はもうあんな目で、佐伯先輩に見られたくないって思ったから。


 臆病なくせに、バスケを見ることをやめられない。


 佐伯先輩を好きでいることをやめられない。


 弱虫で、謝る勇気もない私は、本当にどうしようもない。


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