ただ、名前を呼んで
・家族

母に会った後、夕暮れの中を一人で歩く帰り道。

僕と同じくらいか、それか少し年下くらいの男の子達が自転車に乗って通り過ぎる。

広場か公園で遊んだ帰りだろう。
若干の汗の匂いをさせながら、楽しげに笑い合う彼ら。

きっとそれぞれの家に帰るんだ。

家に着くと母親に迎えられ、しばらくすれば父親も帰って来るんだろう。
もしかすると兄弟も居るかもしれない。

そっと思い描いてみる。
それは、僕の家では見たことのない光景だった。


僕は足元に転がる空き缶をカンと蹴り、祖父母の待つ家へと駆け出した。
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