お茶の香りのパイロット
意思の力
ディーナはショックを受けながら、どうしたらラーガたちの声が聞こえるかをアルミスに尋ねた。


「さぁ、どうしてでしょうね。
私の開発したロボットは、私の意思というか・・・思いがこめられているんです。
まぁ同じ仕事をしている技術者に言わせれば、みんな思いはいっぱいこめていると言われますね。

けれど、ラーガたちは私の特異な能力の影響を受けているというか、意思を持ったロボットなんです。」


「意思を持ってるんですか?ロボットが・・・」



「そうです。フィアが正規軍から追われてここへ逃げ込んだときのことですが、フィアを完全に守ったのはラーガなんです。
私が来たときには、ラーガと面識があったくらいにね。
ちょっと妬けてしまったくらいです。」



「アルミス・・・そんなこと言ったら!」


「私はありのままを説明していますよ。
君とラーガは私がいないとほんとに親しくしてしまうんですから、困ります。

フィアは軍人としては学生でしょうけど、私の開発したロボットたちからは信頼された仲間です。
私が求めるのは腕のいいパイロットにこしたことはありませんが、背中を安心して預けられて心の通じる仲間なんです。

だから・・・ディーナ、申し訳ありませんけど。」


「あの、私に時間とチャンスをください。
私の機体はまだ完成していないのでしょう?
その機体ができあがって、私が相棒に拒絶されたり、通じなかったならあきらめますから、それまでここに置いてください。お願いします。

このまま帰ったとあっては、兄の顔もつぶれてしまいます。
お金しか出さなかったと笑われます。
私もすごく悔しい。お願いします。」



「う~~~~ん・・・じゃ少し私から頼みがあります。
それを守ってくださったなら、チャンスをあげましょう。」


「何でも守ります。・・・で何でしょうか?」



「フィアを見下す態度を改めてください。
それと、私のプライベートを脅かす行動は慎んでください。

いちおう言っておきますが、フィアは特別です。」



「あの・・・見下す態度などはいたしませんが・・・フィアが特別とはどういうことなのですか?」



「彼女が私の自室へ入ることや、私と店にいるのは私が頼んできてもらっていることです。
つまり・・・その・・・フィアは私のお気に入りなんです。」



「お気に入りですって!
アルミス様、あなたは女性嫌いじゃなかったんですか?
開発時に女性を遠くにやるとか、パイロット候補も女性を嫌がるじゃないですか。」



「ああ、そうだったんですけど・・・そうは言ってられない存在なんです。フィアはね。
ね、フィア・・・ってあれ・・・いない。」


「アルミス、そのへんにしておけ。
フィアはさっき真っ赤な顔をして出ていってしまった。
あの子はほんとに恋愛沙汰は慣れてないんだ。

マーティーにキスされたときも震えてしまって、マーティーの隠し部屋へ連れて行かれてしまったほどだからな・・・。」



「キスされたって・・・!隠し部屋へ連れ込まれた!?
な・・・!カイウ!!!おまえがついていながら、どうしてそうなった!
おい、何とか言え!」



「あ、キスって挨拶みたいなやつでだな・・・隠し部屋ではゲーム合戦だったんだから問題ないって。」


「嘘だ!フィアはショックを受けてたはずだ。
私より年上の・・・やり手のビジネスマンに騙されるなんて簡単だ。
ああ~やっぱり私が着いて行かないといけなかったんだぁーーーー!」


「お言葉を返すようですが、兄は女性の合意なしにいやらしい行動などしません。
アルミス様と同じように、女性の方から寄ってくるのです。

それにフィアはキスにはショックだったようですが、兄は久しぶりにゲーム対戦できて楽しかったと子どものような笑みを浮かべて喜んでました。

兄ならアルミス様よりきっとフィアに向いている相手だと言えます。」


「私じゃ、どうしていけない?」


「あなたとフィアじゃ住む世界が違いすぎます。」


「そんなことはない!私はもう王子じゃないし、生まれ故郷の国もとっくにない。
チャンスはあげますが、私の気持ちを乱す言葉は許せませんと言っておきます。」
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