好き嫌い。

その3

カラリ


…教室の戸が開く音がした。


慌てて涙を拭い振り返る。



「よぉ。」


1番会いたくない人が居た。


「奥井くん…」


首から大きなカメラをぶら下げている彼。

父親がやっている写真屋の手伝いをしてるって言ってた。


今日の卒業式も父親と一緒に撮影してたのかな。


彼は背中から1枚の写真を差し出した。


「あんたの好きな風景だろ。やる。」


そこには、窓から見える絶景。
大好きだったこの窓からの風景。

「なんでこれ…」


ずいっと差し出され、勢いで受け取る。


「あの話、デタラメだから。」

「え?」


いきなり話が始まって驚いた。


「俺、誰とも付き合ってなんかないから。」


聞きたかったけど聞けなかった噂。


でも。


「あっ、あたしには、関係ないから!」


ぶっきらぼうに答えて逃げた。


否定してくれて嬉しかった。


…けど、否定されてもあたしにはもう関係ない。



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