甘い恋の始め方
「会いたかったですよ」

悠也の最初の一言で、理子の心臓は射抜かれた。

身体が火照り、顔が赤くなりそうだ。暴れる心臓をどうにか静めたい。

「それは……本心?」

「もちろんです。別れてから君のことが頭から離れない」

「じゃあなぜ電話をくれなかったんですか?」

「急に出張が入って地方に行っていたんです。いつ戻れるかわからなかったので電話が遅れたんですよ。今日の夕方、戻ってきて自宅で少し仕事をしていました」

(なんだ。今日は会社に来ていなかったのね)

合わないように出社時間を早めたのは取り越し苦労だった。

「お忙しいんですね」

「ええ。理子さんも忙しそうですね。職種はなにを?」

「普通の事務です」

この質問はちゃんと用意していた。

加奈の言うとおり、今は会社に勤めているのを言わないでおくつもりだ。

「会った時と雰囲気が違いますね。今日は……仕事の出来る女のイメージだ」

「そんなことないです。ただのOLです」

最初のうちは一言発するのにも緊張していたが、食事を食べながらだんだんとリラックスしてきて会話も弾む。



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