******

金曜日の夕方、8階の会議室でミーティングを済ませた理子と加奈は廊下を歩いていた。

「ね、営業1課の橋本君、けっこう良くない? ミーティング中、彼の視線をちょくちょく感じたのよね」

歩きながら先ほどまで一緒だった営業1課の男性の話を加奈は持ち出す。

身長も高く、体育会系のがっしりした体躯。

2歳年下だけど、引っ張ってくれそうなタイプ。

ミーティングでもどんどん案を出してくれるので、サクサクと会話が進んだ。

「そうなの? 加奈、婚約しているんだから他の男によそ見しちゃだめよ」

理子は笑いながら軽くたしなめる。

「だって、結婚したらよけいにだめじゃない。だから今のうちに」

「婚約者のいる人は余裕ね」

話しながら歩いていた理子の足が、ギクッと立ち止まる。

それから加奈の腕を鷲掴みして自販機の横のスペースに身をひそめる。

「ちょっと、なにしてるのよ」

突然の理子の行動に、加奈が呆れた口調だ。