こたぁは話が終わり部屋を出て行った。
俺は亜美の傷の手当をしながら、猛のことばかりを気にしていた。
今頃になって、猛を殴った拳が痛み出す。
ドタドタドタ
静まり返った部屋に大きな足音が響き渡る。
こんな足音を立てるのは……
「シン」
やっぱりな。
何かを聞きつけたかのように、突然現れる。
帰ってきたら寄ってくれとは言ったけど、今日来るのがこの人らしい。
亜美は突然の来客に固まったまま動かない。
確かに怖いよな。
俺よりも一回り以上大きな体に、この目付き。
そして、何より人を近づけないこのオーラ。
本人は意識なんてしていないだろうけど……
今、目の前に立っているのは俺の兄貴。
殆ど一緒には暮らしていないけど、血の繋がった兄弟だ。
「女か?」
「はい」
部屋をぐるりと見回した兄貴が亜美に視線を移し、そう尋ねると何故だか亜美が返事をしだした。
亜美の怯える姿にも、間抜けな顔にも……
我慢できずに噴出してしまった。