ラストバージン
真面目に相談したり、他愛のない話をしたり、冗談を言い合ったり……。
ただの顔見知り程度の関係だった私達は、随分と親しくなっていた。
初めて食事に行った後からは、お互いの都合の合った日に榛名さんに誘われて何度も出掛けた。
仕事の日でも、帰宅の時間が合えば食事をしたり楓で待ち合わせをしたりする。
そんな私達の事を、マスターはいつも微笑ましそうに見ていた。
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
立ち上がった榛名さんがレジに行くのを制し、首を横に振って笑顔を向ける。
「今日は私にご馳走させて。この間も、ご馳走して貰ってるし」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
正直、榛名さんの方が遥かにたくさん支払ってくれているから、楓のコーヒーくらいではお返しにはならない。
「ご馳走様」
それでも、ほんの少しでも返せる機会があるのが嬉しかった。
「いいえ。じゃあ、マスター、ご馳走様でした。また来ますね」
「おやすみなさい、マスター」
「ありがとうございました。またお待ちしています」
今日も最後のお客さんだった私達を店先まで見送ってくれたマスターに笑顔を向けた後、いつものように榛名さんと肩を並べて歩き出した。
ただの顔見知り程度の関係だった私達は、随分と親しくなっていた。
初めて食事に行った後からは、お互いの都合の合った日に榛名さんに誘われて何度も出掛けた。
仕事の日でも、帰宅の時間が合えば食事をしたり楓で待ち合わせをしたりする。
そんな私達の事を、マスターはいつも微笑ましそうに見ていた。
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
立ち上がった榛名さんがレジに行くのを制し、首を横に振って笑顔を向ける。
「今日は私にご馳走させて。この間も、ご馳走して貰ってるし」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
正直、榛名さんの方が遥かにたくさん支払ってくれているから、楓のコーヒーくらいではお返しにはならない。
「ご馳走様」
それでも、ほんの少しでも返せる機会があるのが嬉しかった。
「いいえ。じゃあ、マスター、ご馳走様でした。また来ますね」
「おやすみなさい、マスター」
「ありがとうございました。またお待ちしています」
今日も最後のお客さんだった私達を店先まで見送ってくれたマスターに笑顔を向けた後、いつものように榛名さんと肩を並べて歩き出した。