恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
あってはならない問題
私に頭突きされても課長は、別段怒るでもなかった。それどころか私を会社まで車に乗せて行ってくれた。
会社までの道中、私は化粧をしながら今朝見た黒い物体について課長に説明していた。
「熱のせいだろ」
「熱? もう下がってましたから! あれは……たぶん」
「たぶん? そんな曖昧な言葉は使うな。たぶんなんて事は無い。物事には必ずそうなる理由があって、結果もグレーは存在しない。黒か白だ」
ーーーやだ、また細かい話? やだよ。ほんとに課長ってさ、曖昧なことは許さない人なんだから。
課長がつくづく嫌になりながら、チークを頬に頬骨にそって楕円形に入れた。
「課長は、信じないんですか? その……霊とか」
「山田、俺がそんなものを信じるとでも思うのか?」
「思いませんけど。一応聞いてみようかと……」
「一応? やめろ。一応なんて言葉使うな。一応ってことは、本当はわかっているのに念のために。そういう意味だ。つまり、お前は俺が霊を信じないのをわかっているのに念のために聞いてみたわけだな?」
「はあ」
「面倒なことするな。時間の無駄だ」
ーーーはあ。確かに時間の無駄だった。課長に話しかけるとあげ足ばかりとられる。ろくな事にならない。
面倒なのは、誰がみてもあんたの方だって。
課長に気がつかれないようにため息を細く吐いた。
ーーー本気で私を惚れさせたいなら、まず性格を直しなさいよ。疲れる男。