恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
苛立ちながら、口紅を引いた。
「山田、その口紅、赤すぎないか?」
信号待ちで課長が私を見た。
「へ? いつものですけど…」
慌ててコンパクトミラーを開く。
「……男を引っ掛けるつもりか?」
「はあ?」
「会社に何しに行ってるんだ。お前は」
「仕事ですけど! 課長こそ、毎日色んな部署の女子社員とランチ行ってるじゃ無いですか! 課長こそ色んな女を口説きたくて会社行ってるんじゃないんですか?!」
さすがにムッとした。会社に遊びに行ってるなんて思われたく無い。
そこそこ真面目に働いて、残業だって嫌でも時には頑張るし、私は私なりに懸命にやってきた。
ーーー男を引っ掛ける? とんでもない! それに口紅が赤い位で男が釣れるなら、とっくにたくさん釣れてないとおかしいじゃない! 馬鹿馬鹿しい!
急に課長が私の肩をガシッと掴んだ。
「ひっ!」
「言っておくが、俺は頼まれて色んな部署の女子社員とランチに行っているんだ。俺から誘ったことは一度もない」
怒ってるみたいに眉をしかめている課長。
「そうですか。それは失礼しました。ですけど、私だって口紅を男の為につける訳ではないですから!」