俺様社長と秘密の契約
6.二つの指輪
「…理子様、お加減でもお悪いのですか?」
「…竹田さん」

応接室の窓から、外を眺める私は、溜息ばかりついていた。
そんな私を心配して、竹田がそう問いかけてきたのだ。

「…とっても元気ですよ、心配かけてすみません」
そう言って笑って見せた。

…あの日から数日後の週末。

私は、無理やり御堂社長の秘書を辞めさせられ、アパートも出され、ここ、お爺様が住んでいた神宮寺邸引っ越してきた。

…すべては、神宮寺社長と、龍介の意向だった。

「…理子」
秘書室を出ていく私に声をかけた龍吾。

「…お世話になりました」
涙を堪えて、そう言うのが精一杯だった。


「…待て!」
出ていこうとする私の腕を掴んだ龍吾は、グイッと自分の方に、私を引き寄せた。

「は・・・離して、ください」
震えた声で呟く。

本当は、離さないでって言いたい。
でも、言えるわけがなかった。


「必ず、理子を迎えに行くから」
「・・・」

なぜ、そんな事を言えるのか?
…何も言わず、龍吾から離れていくと言うのに・・・。

弟のモノになってしまうと言うのに。

もう二度と、私をこうやって抱きしめてはくれないと分かっているのに。


ただぼんやりと、応接室にいる私は、どこかで、龍吾のあの言葉に期待している。
そんな事ありえないのに。
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